スチュワーデス研究
日本航空 制服特集
〜8代目&9代目制服〜
日本航空8代目制服は1996年から着用が開始された
新たに選ばれたデザイナーは稲葉賀恵(イナバヨシエ 1939生・東京都出身)
「シックでエレガントな大人のファッション」という感じを得意としたデサイナーである
JALとの関係は長く、1984年に制服が一般公募された際のJAL側の審査員もしている
制服のデザインは航空会社がデサイナーを選択した時点で
ほぼ決まったと言っても過言ではない
森英恵やANA制服をデザインした芦田淳などのエレガントな中に
個性あるセクシーさなどが表現出来るデザイナーとは違い、
イナバヨシエのデザインはシックで落ち着いた感じ、悪く言えば地味である
制服が発表された当時、え゛ーと思ったCAファンは多かったはず
長く使われてきた紺+赤の色使いも無。シンプルなスーツが新しいJALの顔となった
経費節減もあってアイテム数も激減
ジャケット、ベスト、ブラウス、スカーフ4色、エプロン2色、ベルト、靴
最大の変化は「制帽」が無くなったこと
今までのスチュワーデスのイメージから大きく外れたのは言うまでもない
前代、7代目ミリタリー調制服の一式のコストは約12万円、
この8代目制服の一式のコストは8万円とのこと
経費削減を目的とした制服改訂であった事がわかる
ジャケットは夏冬共用、目の粗い生地である
ベストは3つボタン、金色のバックル付きのベルトは良いアクセントとなっている
しかしこの制服の着用開始直後、CAからの苦情が殺到する
それはジャケットを脱いで白のブラウス姿になると
背中のブラジャーの線が透けて見えてしまうからであった・・・
このブラウス、見た目の生地の質感を大事にしたせいか、
生地がとても薄く、下着の線どころか色まで丸見え。
これが8代目制服の最大の特徴である 透けブラ である
紺も赤の色使い、制帽も無くなり華やかさが失われた代わりに
CAが機内サービスでエプロン姿になった時、
ブラウスから透ける下着を注視していたCAファンは少なくない
スカーフは細かい紋柄のベージュ色と紺色、
世界地図に気球がデザインされた柄でブルーとブラウン
計4種である
エプロンは同じ世界地図柄のブルーとブラウンが2種類ある
チーフパーサー用にはベージュのダブルのジャケット&スカートが用意された
通称「イナバベージュ」「イナベー」または「イナババァベージュ」
年配のCAが更に老けて見える素晴らしい色使いとなってしまった(笑)
靴はヒールの高さが3cm、4cm、6cmの3種
機内でのサービスには低いヒールを履き、機外や乗客を出迎え見送りする時には
高いヒールで見栄えをよくするというのがJAL制靴の伝統
これらのアイテムを削らなかったのは慣例を守ったためと思われる
靴のメーカーは「銀座カネマツ」
制服の中のブランドは靴のみで従来あったジャケット、スカートなどに
制服を製作したメーカーのブランド名のタグはなく、
イナバヨシエのタグがあるだけである
地味制服の着用から8年が過ぎた2004年、9代目制服が発表される
デザイナーはまたも稲葉賀恵・・・さてどうなるかと思えば、
パッと見がぜんぜん変わっていないという前代未聞の制服改訂であった
制服は航空会社の顔、顧客がその変化にも気づかないような制服改訂には意味が無い
「制服改訂論」はANA制服批評の項にも書いてあるので
時間があればぜひご覧頂きたい
さてその9代目制服、地味さは更にパワーアップ。
パーサー用の「イナバベージュ」は無くなった
CAの苦情を受け「透けブラ」も消失。厚めの生地のブラウスとなった
CAファンは唯一の楽しみを奪われ絶望感にひしがれる
こうなると制服としての魅力をいったいどこに見いだせと言うのか・・・
ベテランのCAファンであれば前代と9代目制服の区別は容易であると思うが
普通は言われないと差が分からないほど。
そこで8代目制服と9代目制服の違いを解説。
まず正面から見た時の簡単な区別はジャケットのボタンであろう
前代は4つ、9代目は3つである
制服の色も紺からチャコールグレーに変更されているのだが
このグレーが微妙な色で前制服とさして変わりないだろうという色合い。
生地は8代目が厚めの生地であったが、9代目は機能性を重視して
歴代制服の中で最も軽い生地となった。悪く言えば、
かつての5代目ミニスカ制服の高級ウールなどと比較すると雲泥の差、
生地はとても薄くペラペラの安物・・・
これは極端に1アイテムあたりのコストを落としたことによる影響
予算を削れば質が落ちるのも当たり前である
唯一、評価出来るのは金色のバックル付きのベルト
前代も金色のバックル付きベルトであったが
9代目ではこのバックルにJALのロゴマークが入った
うーん、少しは華やかだ・・・
制靴は「銀座カネマツ」
このカネマツが最後の意地という感じで、長年に渡る採用が続いている
機能性の面で優秀な靴なのであろう
デザインは8代目の先端が尖ったものから丸みをおびたデザインへと変更になった
ヴィトンの偽物鑑定士でもあるまいし、
見た目の区別を説明しなければならないような制服はなんだか悲しい・・・
日本航空のグループ会社、
JALウェイズ、日本アジア航空、JAC、ジェイ・エアなどの制服は
以前はJALとは別物だった。それが現在ではJALと同じデザインで
スカーフなど一部のアイテムでデザインが異なるだけの制服を採用している
これらも経費削減の一環、JALに限らず日本の航空会社は
制服の改訂を重ねるごとに地味になり、アイテム数も減っていく
ANAなどは制靴が支給されず自前の靴となったくらいだ
JALグループの日本アジア航空では過去に君島一郎デザインで
エレベーターガールのような?デパガのような?
受付嬢かコンパニオン?と見間違えるような制服があった
1960年代後半のミニスカブームに航空会社が便乗した時のように
世間で派手派手しいファッションが流行しない限りは
華やかな制服はもう二度と現れないのかもしれない
次のJALの制服改訂は2015年前後であろう
今度こそ華のあるデザイナーを採用するか、公募をするなりして
スチュワーデスらしいエレガントでセクシーな制服になることを
熱望しつつ、JAL制服特集を終わりにする
次はANAの制服特集を予定。
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2006.12.24