CA映画評

〜JAL フライングラビッツ〜





石原さとみ主演「フライングラビッツ」




日本航空の協力で制作された映画「フライングラビッツ」

映画館に足を運ぶほどではないだろうと予測しレンタルDVDとなるのを待っていた。

2008年夏公開だったので約一年が過ぎてやっと観賞することに。

今さらと思われるかもしれないがここでCAfun的観点からリポートをしたい。

ネタバレもあるのでこれから見るという方はDVD観賞の後に本ページをご覧頂きたく・・・



フライングラビッツは新人CA石原さとみがバスケット部「JALラビッツ」に入り、

悪戦苦闘するというストーリー。

石原さとみは子供の頃に乗った飛行機でスチュワーデスに親切にされCAを志望。

スチュワーデスモノにありがちな普通の展開である。

映画冒頭は回想シーン、機内に少女時代の石原さとみ(子役)が座っている。

ひとり旅で不安げな少女のアップ。シートベルト着用のサインが点く。

この時点でCAの姿はまだ映っていない。石原さとみの少女時代の回想シーンの訳だから

当然、飛行機は古いはずなのにシートは新しい。登場するスチュワーデスはいつの時代の制服だろうか?



機内のシートが新しいものだったのでまさか現行制服で来るか!? 時代考証メチャクチャか!?

と不安になったところに通路を歩くCAのシーンに切り替わる。

CA役は元フジテレビアナウンサーの八木亜希子。着用していたのは7代目ミリタリー調制服。

冒頭からCAfun的にはGood!であった。




日本航空7代目制服




これはひょっとしてハッピーフライトを超える素晴らしい映画だったのかも!?と

映画冒頭を見た時には期待をした。

結論から言うと、まあ普通の映画でCA観察映画としての価値は低い。

恋に、バスケに、CAに・・という宣伝文句の通りでCAとしてのシーンは少なく

バスケ=7、恋=2、CA=1、というくらいの比率でバスケットや恋の話の間合いに

CAとしてのストーリーが挿入されるという印象だった。



あくまでメインはバスケット。JALラビッツのCAたちの制服姿が

ふんだんに出て来る訳でもない。これらもほんの数える程度。

訓練の様子を細かく描く訳でもなく、どれもほんの1シーン程度でCAの仕事を紹介している。

教室での講義、歩き方やおじぎの練習、緊急脱出訓練・・・

OJTフライトでひとり旅の少女が機内に持ち込んだハムスターを逃がしてしまい、

それを必死に探すもチーフパーサーに報告せずに始末書、という展開がいちばん長いCA関係のシーン。

いずれのシーンもエキストラが少なくCAウォッチの楽しみは少ない。



スチュワーデスドラマの本質は堀ちえみの「スチュワーデス物語」に代表されるような 職業根性モノである。

「ハッピーフライト」は航空会社のオペレーション全体をテーマにしたものであったが

CAを描く部分は職業根性ドラマそのものだった。

ではフライングラビッツはどうであろうか。

ラビッツに入部した石原さとみが選手として一人前になるべく頑張る姿はスポーツ根性ドラマである。



"バスケットを通してのスポーツ根性ドラマ"と"CAを通しての職業根性ドラマ"、

この相乗効果を狙ったものだとしたら前者は描写できているのに

後者のCA部分はさらっと流し過ぎてまったく成立していない。

映画全体としてももっと山あり谷あり、ジェットコースタームービーというか、

極端な喜怒哀楽を表させないと"根性ドラマ"としては明らかにパワー不足。

どのシーンを見ても平凡でドキドキ感のない映画だった。



ただCAを描くシーンはほぼ正確で上戸彩主演のフジテレビドラマ「アテンションプリーズ」のような

あり得ない展開、あり得ないCA、という現実を無視したデタラメさは無い。

「フライングラビッツ」は忠実にCAが描かれている。JALスチュワーデスドラマはこうでなければ!

と感じさせると同時に「スチュワーデス物語」が映画化されたら良いのにと強く感じさせた。

ロケ地は羽田空港整備場や羽田の街。スチュワーデス物語と同じロケーションもあったので

これがスチュワーデス物語だったらなあ、と何度も思うのであった。




羽田旧整備場(奥)と海老取川にかかる穴守橋。




ツッコミが趣味のCAfun管理人、たったひとつあり得ないシーンがある。

それは福岡へのフライト。到着して乗客を見送った後に彼氏の実家へと向かう石原さとみ。

次のフライトまでの間に制服姿のまま抜け出し・・・という設定なのだが

少々無理がある。よほど空港に近いのなら別だが(笑)。それ以前に

そんなことをするCAはいないと思う。しかも時間までに戻れず・・・

福岡でCAひとり欠けたらどこからスタンバイを呼ぶか。かなり問題である。

もちろん石原さとみは乗務停止の処分となるが、現実だったらクビかもしれない。



映画の中での"キャビンアテンダント"の呼称。

上戸彩のアテンションプリーズでは蕎麦屋のオヤジまでもがキャビンアテンダントと言い、

「キャビンアテンダントと呼ぼう」というキャンペーン番組かと思ったくらいだ。

普通のオジサンがそんな呼称を使うはずもない。

現実離れしているシーンがあるとドラマはシラけてしまう。

"シーエー"と呼ぶケースが増えてきているようにも思えるがまだまだ"スチュワーデス"と言うのが一般的。

石原さとみの父親役は哀川翔、CAのことをスチュワーデスと言っている。

福岡出身の幼なじみの彼氏も同じ、石原さとみの職業をスチュワーデスと呼んでいた。

同じJAL協力のドラマでもこうも差があるものかと思いつつ、

細かい点によく気付いたフライングラビッツに感心した。



教官役はなかなかの美人。初めて見る女優だったので検索をしてみた。

堀内敬子という女優で元劇団四季、数々のヒロイン役をやっていたようである。

舞台女優としてはきっと有名な人なのかもしれない。

JALに実際にいそうなCAで良いキャスティングだと思う。



不満、不足な点は多々あるがもしも時間に余裕があったら見て損はない映画だと思う。

このような映画を作る予算があれば、次はぜひ(日本航空の真の復活を願いつつ)、

「スチュワーデス物語」を作ってほしい!



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2009.11.6

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