CA映画評

〜ANA ハッピーフライト〜







CAを扱った作品でテレビではなく映画というのはめずらしい。

和久井映見がANAのCA役だった映画もあったが制服でのシーンは

ほんの数カットだけだった。(95年・バースデープレゼント)

加山雄三の若大将シリーズ「レッツゴー若大将」では酒井和歌子が

確かパンナムのスチュワーデス役だったと記憶・・・

1966年の「大空に乾杯」は吉永小百合が全日空のスチュワーデス役、

2008年9月公開の「フライングラビッツ」はJALのCA役に石原さとみ・・・

他の映画はいずれもCAの仕事やフライト業務の描写は付属のようなもので

主題は恋愛であった。CAがこれだけ多く出る映画はハッピーフライトが初めてか!?



さて映画を観ての批評をCAfunの視点から述べたい。

ハッピーフライトは、CA、GH、パイロットを中心に"航空オペレーション"を

題材としたものでCAのみが中心のCAドラマではなかった。

Pの田辺誠一、CAの綾瀬はるか、GHの田畑智子、この3人を中心にドラマが展開する。



映画なのでフィルムを使用しており、冒頭のB747が格納庫で休むシーンなどは

とても美しい。

また特撮もなかなかのものでよーく観るとミニチュアなのがわかるが

VFXを駆使しており、かなりの手間と予算がかかっているのは容易に想像できる。

ピトー管(速度を測定する装置)に鳥が激突してトラブルに陥るANA1980便。

ピトー管を巡る事故は実際にもあった(アエロペルー603便事故)。

機体洗浄をするために管の口にガムテープを貼り、

それをはがすのを忘れたまま飛行、冒頭の田辺誠一扮する副操縦士が

シュミレータで機を墜落させてしまうシーンと事故内容は同じだったはず。



撮影場所にも凝っており、羽田の客室部も登場。

格納庫以外でも羽田空港のエプロンで撮影している点は非常にめずらしい。

航空という面すべてにおいてリアルさがよく出ており、脚本を書くにあたって

丁寧に取材をし、研究をした様子がうかがえる。

ANAを舞台にしたキムタク主演の「Good luck」と比較すれば、

リアルさという面では天と地の差。準備期間に2年を費やしたとのことだが

その成果が見事に現れていると言えよう。



唯一の突っ込みどころとしてはCAたちが国際線の機体に向かうために

羽田空港の出発ロビーを歩くシーン。羽田ーホノルルのチャーター便とはいえ、

CAたちは国内線出発ロビーを歩いたりはしない。

演出としてはかつての「スチュワーデス物語」のように二列になってカートを引き、

ロビーを颯爽と歩く姿=スチュワーデスの証し、と誰もが理解しているために

それに応えるべく撮られたシーンであろうから非難すべき点でもなかろう。



それぞれの役の俳優たちも実際にいそうな雰囲気のCA、GH、Pである。

CA役は現代のCAをイメージした感じでまさに役が見事にハマっている子たちばかり。

CPの寺島しのぶなども実際にいそうな感じのチーフパーサーである。

田辺誠一の同僚のパイロット役の髪がボサボサで中途半端に伸びていたりするのも

あーいうパイロットいるな、と思えてとてもリアルである。



オーバーセールで座席が足りなくなった際の処理、GHおなじみの全力疾走、

GHとCAのやりとり・・・興味深いシーンもたくさんある。

グランドホステス役の田畑智子も実際にいそうな感じのGHでとても可愛らしい。



ギャレーと客席でのCAのギャップ、CAの早食い、叱られてトイレで泣く・・・

気分が悪くなった乗客が綾瀬はるか演じるCAの目の前で嘔吐、

綾瀬はるかの着ているエプロンを袋状にして吐いてしまうのだが

目の前で嘔吐され、それを素手で受け止めたCAは実在する。

いずれもありそうな話、実際にあった話などが実にリアルに映像化されている。

ひとつ残念な点は大量のCAのエキストラがいなかったこと。

多くのCAを観察したいスチュワーデスファンとしてはガッカリだった。



JALの「フライングラビッツ」 (製作 テレビ東京・東映・電通)はコケたが

ANAの「ハッピーフライト」(製作 フジテレビ・東宝・電通)は興業的にも成功か!?

アテンションプリーズ、白い滑走路、スチュワーデス物語と企業イメージアップのための

テレビドラマはJALの独壇場だった。しかし近年ではANAの圧倒的勝利と言えるかもしれない。

次のCAドラマは映画かテレビか、大きな題材としてはスチュワーデス物語のリメイクがあるが

果たして今後、どんなCAドラマ作りがなされるか楽しみである。



映画「ハッピーフライト」評。

ハッピーフライトはスチュワーデスのないしょ話という山ほど出版されているジャンルに

パイロット、グランドホステスの話を同量加えて、

スバイスに整備や管制、ANAのオペレーション業務の話を入れ、

バランス良く仕上げたドラマである。

"飛行機の安全運航にかかわる人々の日々の苦労"が主題。

評価としてはズバリ「おもしろい」。

後に余韻や感動が残る名作ではないが、娯楽作品としてはvery good!



ちなみにタイトルは「ハッピーフライト」ではなくもっと別のものが良かった気がする。

「ANAばんざい」とか・・・(笑)

エンディングではフランク・シナトラの「Come fly with me」が流れるが、

これを全日空の社歌に変えれば、ANA社員の士気抑揚のためのパーフェクトな作品となるだろう。

伊豆山研修所で上映会が開かれる日も近いか!?



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2008.11.20