スチュワーデスの花道








お水の花道(古いか)ならぬスチュワーデスの花道と聞いて何を想像されるだろうか?

寿退職?チーフパーサーでVIPフライトの担当?

CAが最も視線を浴び、CA志望者がその姿に憧れ、

周囲の人々もついCAに目が行ってしまう場所。

当サイトが考える「スチュワーデスの花道」は国際線の出発ロビーである。



キャリーカートをガラガラと引き、颯爽と歩く姿はスチュワーデスの証し。

「わたしはスッチーよ!」と言わんばかりのその姿に

つい視線を向けてしまうのはCAファンもCA志望者も観光客も同じであろう。



例えば成田空港、

昔はターミナルとオペレーションセンターが離れていたために

JAL、ANAともにクルー専用のバスでターミナルへ移動していた。

ひとつの便のクルーがまとまって移動をするので大人数になる。



スチュワーデスが2列に並び、空港のロビーをカートを引いて歩く姿は

CAを主役にしたドラマではよく見られるシーン。

空港のロビーはまさに「スチュワーデスの檜舞台」と言える。

実は2列にキレイに並んで行進するのはテレビの中のことだけで

実際はバラバラに出発ゲートへと向かうのだが・・・

まあそれでも10人以上のCAが束になって早足でキャリーカートを引く風景には

圧倒されるというか、存在感があったりするものだ。






スチュワーデスが通ります。一般人は道を開けてください。みたいな・・・



ちなみにこの檜舞台は国際線の出発ロビーに限られる。

国内線だとオペセンから直接ターミナルに入ってしまったり、

荷物が少ないのでキャリーカートを持っていないCAもいる。



花道を歩く標準的なスタイルとしては、

キャリーカートにオーバーナイトバッグを乗せ、その上にガーメントケース、

または私物のバッグ、肩からショルダーバッグ、そして時にはもう一方の手に

スーツケースも加わるという重装備である。

ちなみに女性にとってはかなりの荷物、しかも一人だけのんびり歩いている訳にはいかないので

CA全員が自然と早足になる。



余談ではあるが成田空港で非常にめずらしい風景を目撃したことがあった。

出発ロビーで掃除のおばさんがせっせとモップがけ、ピカピカになったその場所に

キャリーカートを引いたCAが早足で歩き抜けようとしていた。

カートを引いて颯爽と歩くCA、しかし突然の悲劇がCAを襲う。

靴が滑ってカートを手にしたまま、ズルッ!とコケて 尻もちをついてしまったのだ。

モップがけしたばかりの床が原因であった。

出発ロビーは「スチュワーデスの花道」。その花道でコケるとは一生の不覚である。

横綱の土俵入りでまわしが外れて、チン○丸出しになったくらいの

恥ずかしさに等しかったと思う・・・






CAのキャリーカートは特別なものではなく市販品と変わらない。(左)前制服時代のANA。(右)現在のJAL



カートに必ず乗っている長方形のバッグが「オーバーナイトバッグ」

これは一泊から二泊程度の荷物を入れるためのバッグで

中には仕切りなどは一切なく、どんな荷物も簡単に詰め込める。

大昔はトランクケースと呼ばれたもので昭和の新婚旅行の映像などを見ると

全員がトランクケースを持っているほどポピュラーなバッグだった。

大きさは30センチ×50センチ、厚さは15センチ程度、型くずれしないように

バッグの周囲がハードケースのようになっていて、その分バッグ自体に重量がある。

それがキャリーカートを使用するようになった要因ではないかと推測。






JALミリタリー調制服時代のオーバーナイトバッグ。合革製で中央にJALのロゴ




1970年代の日本航空。モリハナエミニスカ制服時代には

キャリーカートはなかった。この頃のバッグは軽かったのだろう。

スチュワーデスは手でトランクケースを持って歩いていたようだ。

キャリーカートが登場するのは1978年のモリハナエ制服から。

JAL国際線が次々に路線を拡大し、絶好調の頃である。

全日空などがキャリーカートを使うようになるのはずっと後、

国際線に進出する1986年くらいからである。



なぜ空港でキャリーカートをガラガラと引く姿に憧れるのか。

それはやはりマスコミの宣伝によるところが大きいと思われる。

CM、ドラマ、雑誌、どれもCAを紹介する際には空港をカートを引いて歩く姿を

象徴的なシーンとして使いまくっていたことが

空港=スチュワーデス=キャリーカートというイメージを作りあげたのだと思う。

堀ちえみのスチュワーデス物語では成田の出発ロビーを

スチュワーデスたちが歩くシーンが何度も登場していた。






キャリーカートを使うようになったのはこの制服の時代から



現在ではエアラインによってはカートを支給していない会社もあり、

よく観察すると個々に違うカートを使っていたりして興味深い。

近年の最も大きな変化はANA。

オーバーナイトバッグの代わりに別のバッグが支給され始めた

そのバッグとは通称「ピギーバッグ」

10年ほど前から流行しているタイヤのついた小型のスーツケースで

国内線などでは多くの旅行客が持っているバッグである。

「機内持ち込み可能なサイズ」で取っ手は伸縮性、底にタイヤがついている。

持ち歩くのが楽なせいか、街中でピギーバッグを持っている人もいる。

空港ともなれば旅行客のほぼ全員がガラガラガラとピギーバッグ、スーツケースを引いているという有様。



ガラガラするのはスチュワーデスだけの特権なので

現状の空港の風景はどうも納得がいかない(笑)

しかもCAが一般客と同じようなバッグになってしまうのは

情緒がないというか何というか・・・






(左)が今までのスタイル、(右)が新しく支給されているピギーバッグ。





強化プラスチック製タイヤ付きのANA新支給バッグは
今までのオーバーナイトバッグと同じくらいの大きさ




現実的に考えれば、一泊から二泊程度の荷物を入れるオーバーナイトバッグを支給、

そしてカートを別に用意するよりも、タイヤ付きのバッグひとつにまとめてしまったほうが

あらゆる面で好都合なのだろう。これも時代の変化のひとつか。

しかしスチュワーデスにピギーバッグはなんだかしっくりこない。と思うのはCAfun管理人だけか!?






シンガポール航空に至ってはヴィトンにキャリーカート・・・カッコいいのか悪いのか!?

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2008.4.13