スチュワーデスの寮生活
〜寮生活の実際〜
1041号室があかねちゃんの部屋だ
ドアにはミッキーマウスの絵が入ったホワイトボードを張り付けてある
留守の時にメッセージを残してもらうためだ
ホワイトボードの横には自分の今月のスケジュールを手書きしたものが張ってある
何せ、携帯電話もメールも無い時代である
友人との連絡、寂しさを紛らわす手段としてこのような方法が
スチュワーデスの寮生活の中では一般的であった
鍵をあけ、熊のプーさんのカバーをつけたドアノブを回して部屋に入る
いかに自分の部屋のドアでおしゃれをするか、という面に凝るあたりは
若い純粋な女の子という感じで可愛い
しかしながらドアノブにカバーをつけるセンスを見る限りは
便所のドアかよっ!とツッコミたい気分でもある
部屋に入ると壁側に机、窓際にベッドがある
窓からは成田の風景が一望できる
のどかな風景ではあるが、成田という都市はホントに何もない所・・・
これなら、地元の鹿児島の方がよっぽど大都会だ
寮に入って1週間目のこと、駅前に行けばたくさんお店があるかなぁと思い、
休みが一緒だった同期と成田駅まで行ったときには絶句した
寮の玄関の受付にある自転車貸し出しノートに自分のサインをして
寮共用の自転車を借りる。15分ほどで着いた成田駅、
先輩から何もないとは聞いてはいたがホントに何もなかった・・・
駅の反対側にも行ってみたが、商店がほんの少しあるだけ。
デパートくらいはあるのかなと思っていたが何もなかった・・・
仕方ないので成田山新勝寺を見物して参道のうなぎ屋さんに入った
それからオフの日には成田駅に何度か行ってはみたが
結局は行くところが無くて成田山新勝寺にお参り、
参道で焼きたての手作りのおせんべいを買って歩きながら食べる
そのあとは老舗の日本料理屋さんか天ぷら屋さんかおそば屋さんへ。
なんかわたしの憧れていたスチュワーデス生活とは違うような気が・・・
ふと思うあかねちゃんであったが、そんなことはサッと忘れ、
寮の友達へのお土産に美味しそうな羊かんを買う
寮に帰っておせんべいと羊かんを食べながら
成田山新勝寺は何の神様なのかな?ご利益はあるのかな?と思いつつ、
そんなに足しげく成田山に通っても、線香くさくなるだけで
何だか寂しい気分になっているあかねちゃんであった
制服を脱いでスエットの上下に着替える
お腹がすいたので食堂へ行く。こんな格好で気軽にゴハンが
食べられるのも女子寮だからこそだ
夕食の時間は午後6時から9時まで。2階には電子レンジや本格的な料理も
出来る共用キッチンがあるので自炊している人もいる
手に握りしめたチケットを出す。夕食は300円。けっこう美味しい
部屋へ戻ると同じ階の同期がちょうどフライトから帰ってきた
彼女の部屋に入り、話が盛り上がる
フライトの話、いま付き合っている彼氏の話、彼氏のいないあかねちゃんの話・・・
そろそろお風呂だ。バスタオルなどの洗面道具を持って大浴場へ
今日はお風呂が意外と空いている。ラッキー!混んでいるとゆっくり入れないので嫌だ
脱衣所で服を脱ぐ。誰がいるかなと思いながら中に入る
腰掛けて体を洗い、髪をシャンプー
このあいだは入り口から3番目の席のシャワーの出が悪くてヒドイ目にあったので
寮監さんに伝えた
シャンプーをしている最中に突然お湯が出なくなったのだ
目を閉じたまま立ち上がって、となりのシャワーを手探りで見つけ、
シャンプーを洗い流した。それを見ていた同期から、
「横山やすしかと思った」と大笑いされ、とても恥ずかしかった・・・
国際線スチュワーデスのスケジュールは不規則、
夜中の3時に起きる人もいれば、朝9時に帰ってきて寝る人もいる
大浴場は掃除の時間を除いて、いつでも入れるようになっている
年中無休だからシャワーの故障などもあるのだろう
あとから同期がお風呂に入って来た、湯船に浸かって二人で話し込む
女同士の裸の付き合いは意外と楽しい
男性は前を隠して風呂に入るが女性は違う。みんな何も隠さず裸で堂々としている
むかし別の寮に住んでいた先輩から聞いた話を思い出した
その寮は外国人スチュワーデスが訓練の時だけ入居していたそうだ
香港やシンガポールベースの外国人スチュワーデスは
寮の大浴場の風景にとても驚くらしい
みんな裸で何も隠さないで平気で歩いているし、
恥ずかしそうな顔も見せずに湯船で話している姿をみて、
JALの日本人スチュワーデスはすごいと思ったそうだ・・・
一緒に仕事をしたことはないけれど何度か顔を見たことがある先輩が
湯船に浸かってくつろいでいる
疲れているのか、ウトウトして寝むってしまっている
しばらくしたら、ザブンと音がしてその先輩スチュワーデスが湯船の中に消えた
「大丈夫ですか」と声をかけるとその先輩は笑ってゴマかしていた
きっとフライトで疲れているのだろう
のぼせそうなので出る、脱衣所に並んでいる鏡の前でドライヤー、
髪をさっと乾かしてから、洗面具をかかえてエレベーターに乗る
「あー、のどが乾いたぁー」
各階の共用スペースには洗濯機や乾燥機、掃除機やふとん乾燥機まで備えてある
部屋に冷蔵庫がないので自分の階の共同スペースの冷蔵庫へ
冷蔵庫に入れる飲み物や食べ物には自分の名前を書いておく決まりだ
そうしないと誰のものかわからなくなる
冷蔵庫のドアを開けたあかねちゃん
「あれっ、名前を書いておいた わたしのジュースがない!」
せっかくお風呂上がりに飲もうと思ってたのに・・うぇーん
マジックでジュースに名前を書いていたのに字が小さかったのか、
次はもっと大きく名前を書こうと心に決めたあかねちゃんであった・・・
スチュワーデスの寮生活・執筆中の次章へつづく
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2007.4.29