スチュワーデス誕生の裏話
〜その3 訓練〜
授業は夕方5-6時には終わるが、さっさと家に帰り明日の予習をしなければ
テストに合格出来ない。それほど覚えることがたくさんある
何か授業に関係した紙を配るだけで「抜き打ちテスト!?」と思い、
テストではありません、合否はないですよと言うとドッと歓声が上がる
それくらい日々の緊張が続いている
授業中は当たり前だが私語は厳禁、
その反動か休憩時間中はおしゃべりが強烈にうるさいのが新人訓練生の特徴
ちなみに訓練センターに来ているのは訓練生ばかりではない
一年に一度義務づけられている緊急脱出訓練や
その他の講習などの為に新人以外の現役CAも多数出入りしている。中には、
すんごい太ったオバサンCAや やたら声のデカいオバサンCA、
制服がパンパンになっているオバサンCAなど万国博覧会状態だ
ここで某訓練教官が見た各CAの特徴を発表
ベテランCAの特徴
仕事に命をかけてるベテランが多いせいか、講義に関しては真剣そのもの
教官に対して質問連発は勿論のこと、後日メールで質問を浴びせて来るCAもいる
講義が予定時間より早く終わると大喜び。そんなに早く帰りたいのか?
最近増えた外国人CAの特徴
講義の途中で数人がいなくなっている。しかし講義終了時間には全員が揃っている
ナメとんのか、ワレ
新人訓練生の特徴
何を言っても元気よく「はい!」と返事をする。お返事だけは立派
おまえら、本当にわかって返事してるんだろうな?
その返事くらい、仕事も きちんと出来るようになってほしい。頑張れ
訓練生といえば、こんな話がある。以下は某教官の証言
「消防署から救急隊員を招いて人口呼吸の授業というのがあります
こういう授業は見学者も多くて私もヒマな時はよく見に行きました
CA訓練生が人口呼吸する時に(相手は人形) 前にかがみますよね
授業中は私服なので夏だとけっこう薄着だったりする
スカートの子は別ですがパンツの子は背中が見えたりするんです
ちょっとローライズ気味のパンツなんかだと腰のあたりが丸見え
今までトータルで200人くらいのCA訓練生を見ましたが
その中で5人くらい、腰にタトゥをしている訓練生がいました」
これはエロいというか、今どきというべきか
タトゥをしている訓練生は決して派手ではなく、ごくごく普通の子だったそうである
あなたはタトゥのあるスチュワーデスのお姉さんは好きですか?
約2か月間の訓練が終わると最後に面接が行われ、合否が伝えられる
ここに来るまでには多数の試験をし、落ちれば再テスト
面接時に至って再訓練となるのはごく稀なケースである
従って最後の面接は儀式のようなもの
テレビのスチュワーデスものドキュメンタリーでもよくあるシーンが展開される
「よく頑張りました。合格です」と担当だった教官から
自分の名前が彫られたネームプレートを胸につけてもらう
ここで訓練生は感極まって涙する
映画で言えばラストカット、最も盛り上がるシーンである
しかし近頃の帰国子女などは至って冷静、
ネームプレートをつけてやるくらいでは泣かない子もいる
そこでいかに訓練生を感動させ泣かすかに執念を燃やす変態オババ教官もいたりする
「あなたはとても頑張りましたね。一時は心配なこともありましたけれど
本当によくここまで頑張りました。私も嬉しいです。一緒にフライトするのを楽しみにしていますよ」
なんて優しく語りかけながらプレートをつけてやったりすると
もう訓練生は涙ウルウル状態、これが教官の醍醐味だったりもするらしい
その後は全員揃って修了式だ
この日はもちろん同期みんなで飲み会。緊張から解放され、
おおいに盛り上がる日でもある
数日後からはOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング / 実際に勤務につき機上訓練)だ
3便から4便を訓練生バッジをつけて乗務し、機上でのチェックが行われる
「スチュワーデス物語」の松本千秋の場合はOJTに不合格
訓練センターに逆戻りであった
初日は成田や関空(国際線)、羽田、伊丹(国内線)など配属先に出勤
いろいろな書類を受け取り、自分のメールボックスを当てがわれ、
様々な説明を聞き、訓練生バッジとフライトのスケジュールを受け取る
各訓練生につくインストラクターはだいたい20代後半から30代前半のCA
OJTでは手取り足取り、訓練生を教育する
訓練生と年の差はそれほど無いが、数年のキャリアの違いは決定的だ
ちなみにANAではOJTの時に自分を担当してくれたイントラクターのことを
「お母さん」と呼んだりする。CAの上下関係は優しくもあり厳しくもある
同期生はそれぞれ別の便に乗務、周りは初対面のCAばかり
頭は真っ白、何とかフライトを終えるのがやっと、というのが平均的な訓練生の姿
OJTでの訓練生の仕事のスピードは先輩CAの約半分
いろいろな場面で差が現れるが、休憩中の食事でも先輩CAとの差は歴然である
一人前のCAともなれば、ギャレーで休憩中に、機が折り返す間のインターバルに、
短時間で食事を終えなければならない
例えば国内線のインターバル、60分の折り返し時間があったとする
次の便の準備などもあり休憩時間は実質15分程度。
その間、機内で慌ただしく機内清掃なども行われている
訓練生が弁当の約3分の1を食べ終えた頃、
先輩CAはすでに食事を終え、お茶を飲んでいる
その食事のスピードといえば、それはもう本当に尋常ではない
「テレビチャンピオン・職業別 早食い団体戦」があったとしたら
間違いなく客室乗務員チームの優勝である
先輩CAからは「いいのよ、ゆっくり食べてて」と声をかけられるが
そんな訳にはいかない無言の圧力をヒシヒシと感じる
そしてフライトを数回経験するうちに「早食いチャンピオン」がまた一人誕生だ
そんなこんなでOJTのチェックに合格すると訓練生バッジを返却
契約書に署名、捺印し、晴れて契約社員となる
そして3年間乗務の後に正社員になるが、本当に一人前になったと感じる時は
客室部の隅にある喫煙室でタバコを堂々と吸えるようになった時。
喫煙室は客室部の大奥とも呼ばれ、
恐ろしい先輩がタムロしている場所で新人はとうてい近づけない
(某ベテランCAの新人時代の回想証言から)
3章に渡った「スチュワーデス誕生までの裏話」
プライドの高いスッチーが生まれてしまう要因や
同期との結束、特殊な環境の職場、先輩と後輩の上下関係等々を
何となく感じ取って頂けただろうか
敵を攻めるには敵を理解することから。
次章は「CAと知り合うには上級者編 パート3」
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2005.11.22