スチュワーデス誕生の裏話

〜その2 社員研修〜





スチュワーデスの入社試験の場合、

同時期に試験に合格してもそれぞれ入社日が異なる

訓練の都合で数グループに分かれ、例えば3月入社、4月入社、5月入社などとなる



試験に合格し晴れて入社が決まった子たちを待ち受けているのは厳しい訓練

しかしその前に意外と知られていないのが社員教育の為の研修。

今回もANAを例にとってみる



入社式は形通り。地味で特筆するものはない

この後、すぐに全員がバスに乗せられ静岡県熱海市の山の中にある「伊豆山研修所」へ

ここで3泊4日の軍隊式教育が施される

ちなみにこの研修所、建物が古いせいか、天井の防音材にアスベストが使用されている

こんなプチ情報はいらないか!?



伊豆山研修所では2人1部屋

ベッドと机が二つずつ並んだ簡素な部屋である

部屋にテレビはない。シャワー・トイレもないので入浴は大浴場で。

熱海という土地柄、なんと! 温泉が引かれている

相模湾を一望できるこの展望浴場。大パノラマも自慢の一つである



この温泉にCA訓練生がスッポンポンで 一斉に入浴する姿は

まさに壮観! (見たことはないが・・・)

しかしあまりに日程を詰め込みすぎているために入浴時間は5分程度。



大パノラマを見ながらゆっくり温泉につかるどころか、

自分のオ○ンコさえ 洗うヒマもない。

さながら「女刑務所24時」みたいな状態である






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ちなみにCAの寮も古い建物であれば風呂は共同浴場である

女性は男性と違い、タオルで隠すという事はあまりしないそうだ

寮に住んだ経験のある某CAの話によると

浴場に入る時は先輩がいないかドキドキしながら

「失礼しまーす」とドアを開け、全裸で堂々と入って行くそうである

そんなCAたちの大浴場。冥土のみやげに一度は入ってみたい



さて、研修だが起床は朝5時

インストラクターとして先輩CAが数人、訓練生たちを担当する

研修棟の前の庭に2列に整列、点呼の後にラジオ体操。

ここで訓練生の中にラジオ体操を知らない帰国子女が混じっていたりすると

手取り足取りラジオ体操の特訓から、という痛い状況が発生する



しかしそこは団結力が求められる訓練生同士、

就寝前に帰国子女の訓練生にみんなでラジオ体操を教える

なんていう心温まるシーン、客観的に見るとドン引きしそうなシーンが展開する

そんなこんなで同期入社の和が広がって行くわけで

それが研修の狙いでもあったりする



体操が終わるとジョギングだ

ジョギングの際の掛け声は訓練生が自主的に決める

「1、2、3、4!」なんていうのがポピュラーだが

何を血迷ったか、一人の訓練生が「エッサ! ホイサ!」と掛け声を出し

それに連られて全員が「エッサ! ホイサ!」と真剣に掛け声を始めてしまい

インストラクターから えらく叱られた訓練生がいたのは昔のこと

いくら熱海の山中とは言え、オマエはおサルのカゴ屋か!?






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戻って来たら社旗掲揚と社歌斉唱のセレモニーが待っている

「ただいまから社歌を歌います!」

それぞれの係に選ばれた訓練生が前に出て大声で挨拶する

なぜか社歌を唱うくらいのことで自己紹介、朝っぱらから暑苦しさが松岡修造なみだ


「社歌担当の佐藤です!」

「同じく鈴木です!」

「三波春夫でございます」

なんていうオチは絶対に言えない雰囲気である・・・



「ただいまから社旗を掲揚します。社旗を掲揚する目的は

 今日も一日、安全運航の達成を願って社員の心をひとつにする為です!」

うーん・・・安全運航を願うならもっと他にやれそうな事があると思うが・・・

社歌は平凡だが音楽著作権の関係でここには書けないので省略






晴れた日には研修所から相模湾が見渡せる。画像をクリック




部屋のゴミは毎朝廊下に出す、研修室や廊下は私語厳禁、ポケットに手を入れない、

食堂での着席は出口に近い椅子から順番に座っていく、

5分前には必ず集合、遅刻した者がいた際は同じ班の者が責任を持って呼びに行く、

などなど、徹底した団体行動が求められる古いタイプの社員教育である

研修では他国や他業種を参考にデータやマニュアルを重視した講義、

営業部門や役員の講義もあったりするが

あくまで主眼は社会人として団体生活の大切さを教えるためのもの



「誰かのミスはみんなの責任」という方向性が徹底しているので

良い意味では団結力、悪い意味では

出る釘は打たれ、個性を発揮する場のない社風を作るという弊害もある

ANAの企業分析のページではないので、以下は省略するが

全体主義 + 女性だけの職場という環境は特殊である

これに順応出来る子=日本のスチュワーデスの適性、と言っても良いくらいだ



この研修、最終日の夜には懇親会と呼ばれるものがある

名前は懇親会だが実は大宴会。

訓練生は宴会があるなど夢にも思っておらず、一種のサプライズ。

もちろんアルコールもOKである






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研修中の厳しさを忘れ、訓練生同士で盛り上がる。まさに飛んで火に入るアメとムチ。

あくまで懇親会なので、訓練生たちが学生気分に戻ってドンチャン騒ぎにならぬよう、

手綱を引き締めるのがインストラクター(先輩CA)の腕の見せどころでもある

知らず知らずのうちに同期の団結力は強まり、

先輩後輩の上下関係の厳しさをも知らしめる宴会なのである



厳しかった数日間、これで航空会社の一員になったと実感、

CAに一歩近づいたと感じる瞬間でもあり、研修が終わると涙する訓練生もいる

そして数日の休みの後、今度は場所を羽田近くの訓練センターに移し、

CAになるための厳しい訓練が始まる


パート3へ続く





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2005.11