スチュワーデスの時間的・空間的孤立
〜仕事と結婚〜
今回、取り上げるのは「スチュワーデスの時間的・空間的孤立」
なんじゃそりゃ、と思った諸氏も多いはず
スチュワーデスという仕事の特殊性から生じる恋愛観、結婚観
そして、そのウィークポイントを探るのが第12章のテーマだ
CAたちの結婚意識も含め、心理状態を知ることも大事なポイントである
CAの結婚式。男に生まれたからには、
一度は行きたい場所である。
式や披露宴に呼ばれている女性メンバーは
花嫁となるスチュワーデスの「同期」がそのほとんどを占め、
次に同じ班やグループの先輩や後輩などがいる
風間杜夫が教官で掘ちえみが訓練生の「スチュワーデス物語」
劇中の訓練生グループは478期と呼ばれ全20名であった
(現在、期は廃止されている)
航空会社ではこのような約20人前後を一つのグループとして、
スチュワーデスになる為の厳しい訓練を行なう
同じ入社時期でこの訓練グループが異なる同僚の事を「セミ同期」と呼ぶ
辛い訓練を ともに泣き、ともに笑い、苦労を分かち合う「同期」
同期入社のスチュワーデス同士の連帯感は異常に強い
一人前のスチュワーデスとなり配属される時はバラバラになるが
合コンや結婚式で「同期」のCAに召集がかけられるのは当然の成り行きである
20代のスチュワーデスが結婚した場合、
同期のスチュワーデス達から祝福の声が浴びせられる
これが30才リーチや30代スチュワーデスの場合、
同期の独身CAからの祝福の声に もう一言が加わる
結束しているという意味において、この「同期」が逆の作用を起こしてしまう瞬間だ
「おめでとう」そして、
「○○ちゃんだけ ずるいよね」「この裏切り者・・・」
「CAって離婚率高いのよ、がんばって」などなど・・・妬みと誹謗の嵐である
ジョーク混じりではあるが、これが半分本気なので恐ろしい
行き遅れた焦り、自分は一生独身かもしれないという危機感、
そしてなかなか現れない理想の男性。
「同期20人、寿退職したのは15人、残り5人の売れ残りに私も入っている。死にたい・・・」
と真剣に自殺を考えるCAもいるくらいだ (んなわけない)
他職種ではこのような心理状態は生まれにくい
同期との結束もさして強くなく、また同じ職場の男性と知り合うきっかけもあるため、
寿退職は比較的容易である
航空業界独自の「同期 寿退職カウントダウン現象」は
独身CAに大きなプレッシャーを与えていることは言うまでもない
客室乗務員という仕事の性質がもたらす病気もある
アソコにヘンなデキモノが。あ゛ー、かゆい・・・
というヘンな病気の話ではないので念のため。
日本や世界の各地へ行けるというのがスチュワーデス志望者の主たる志望理由の一つだが、
これが要因となる病いだ。家と空港、飛行機、世界や日本の各都市との往復、
これはある意味、一般社会からの隔離にも似ている
一見自由に思えるが外の世界への感心が著しく薄くなるのだ
世間への感心の薄さという面ではOLや女子高生だって一緒と思うだろうがちょいと違う
CAの仕事は本当にきつい。スケジュールも特殊である
フライト後の貴重な時間や休日は、寝ること、家事、遊ぶこと、飲みに行くこと、
合コンなどで もうイッパイだ
就職前に読んでいた新聞やテレビのニュースも観なくなる
せいぜい機内サービスで配る新聞の見出しが目に入る程度
政治、経済など ほとんど感心を失い、世界の動きなど全くわからなくなる
読書もしなくなり、読む本といえば せいぜいファッション誌くらい
新人の頃はプライベートのスケジュールで忙しく、
ベテランになると「○○委員会」のミーティング、新人教育の為のカリキュラム、
班会の準備、etc...
フライト以外の余計な仕事が津波のように押し寄せる
CAの休みは不規則。土日が休みの一般企業の友人との接点が少なくなり
休日は自然とCA同士で遊ぶ事が多くなる
仕事&プライベートのスケジュールに追われるのは新人からベテランまで同等である
そしてその事を無意識のうちに誇りと感じてしまう。これが一番イタイ・・・
「スチュワーデス」という華やかな世界に身を置いていると思っているCAほど、
外への感心が薄くなる傾向が強い
ここまでの話、ピンと来ない方々も多いかもしれない
わかりやすい例をあげてみよう
CAとの合コン、またはCAとの初デート、電話での会話・・・
こんな場面に出くわす事がある。CAと接触した事のある諸氏なら
誰でも経験しているはずの現象である
男「来週の土曜は空いてるかな?」
CA「えーっと、その日は沖縄シングルで遅パタなの」
男「?・・・」
男「合コンのメンバー、揃った?」
CA「セミ同期で揃えたわ。でもひとりだけスタンバイなのよねぇ」
男「?・・・」
普通の業種であれば業界や社内の専門用語を外部の人間に対しては使わない
その様な用語を使用しても外部の人間が理解出来ない事を認識しているからだ
しかしスチュワーデスは違うのである。相手が初対面だとしても専門用語を出す
けっしてCAである事を自慢している訳ではない
あくまで無意識なのである。これはどういうことか?
答。「スチュワーデス」が彼女たちにとって唯一生きている世界で それが日常だからだ
CAが存在している空間は、ステイ先の都市・機内・会社・自宅、
休みの日に外へ出てもCA同士・・・・
外部との接触が自然と閉ざされているのである
これは竜宮城へ出掛けた浦島太郎に似ている
世間の動きとは関係なく時間が止まっている「CAの世界」
寿退職カウントダウン現象に見られる「結婚」への焦り
これらを生かさない手はない。
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